その弁護士は、ブタか、或いはニワトリか

投稿日:2017年5月11日

カテゴリ:事務所ブログ

「ブタとニワトリの朝食」というたとえ話、ご存知でしょうか。
ブタとニワトリの家に、お客様が来ることになり、二匹は、朝食に何をお出しするか話し合った。ニワトリが「ベーコンエッグにしましょうよ」といいました。ブタはむっとして「あなたはいつもと同じように卵を産む程度でしょうけれども、私は命がけなんですよ」と答えた、という話です。

この話が、弁護士とお客様の関係に与える示唆は大きいものです。
弁護士にとって、事件は結局「他人事」です。お客様にとってどれほど人生を賭けた、或いは社運を揺るがす大事件であっても、弁護士にとってはひとさまの人生であり、或いは他社さんの事件です。その事件がどう終わろうとも、弁護士の人生は進んでいきますし、また事務所の経営も続けなければなりません。また、そう割り切らなければ、とても弁護士稼業など続けられるものではない、というのも事実です。
しかし、一方で、「この事件がお客様に与える影響はどのようなものか。もしこんなことが、ウチの事務所に起こったら、自分は…」、それをリアルに共感できないようでは、本当に必死に事件を解決しようと、知恵を振り絞ることもできません。お客様とのコミュニケーションも取れません。どんな小さなことであっても、「なんでこんなことにこのお客様はこだわるのだろう」と弁護士が思うようではおしまいです。お客様の抱える不安、思いをできるだけリアルに感じよう、これが自分だったら、自分の親だったら、と常に考えながら動かなければ、お客様からご信頼をいただくことはできない。弁護士は毎日、多数の事件を捌きますけれども、どのひとつをとってもお客様には一世一代の大事件。ニワトリが毎朝産む卵とは違います。しかし一方、その多数の事件一つ一つに、ブタがベーコンを提供するように、弁護士が血肉を削っていってはこちら(我々弁護士)が生きていけません(少なくとも正常な精神状態では生きていけないでしょう…)。
我々はそのバランスを取りながら、お客様に、最高の朝食をお出ししていかなくてはなりません。
ただ、顧問のお客様はまた違います。顧問のお客様は弁護士にとって、限りなく自分の血肉に近いものです。文字通り、会社の一生を私たちに任せてくださっているのですから、こちらも命がけでお守りしなくてはなりません。そのためには、少しくらいお尻の肉を削られたって我慢する。顧問のお客様には、それで安心して、安全に栄えて頂いて、後々、お肉を返していただければそれでいい。お客様とともに栄えていく。一緒に美味しい朝食を作り、そしてそれを新たなビジネスの活力としていきたい。私たちは、そう思います。