キリンシティ「黒ビールカリー」措置命令事件から考える
投稿日:2018年6月19日
カテゴリ:事務所ブログ
キリンシティ株式会社が、消費者庁から景表法違反による措置命令を受けました。
黒ビールカリー、黒ビールカリーピザ、黒ビール仕込みの牛筋ドライカレー、などなどの商品において、実は黒ビールを使ってなかったことから、これらのメニュー標記が「優良誤認表示」であり、景表法違反として措置命令を受けたのです。
なぜ、このような事態になったのか。
キリンシティの発表によれば、販売開始以来、「黒ビールカリー」一連のシリーズは核店舗内で調理しており、そのころには本当に黒ビールを使っていたようです。しかしキリンシティは平成27年からカリーソースの製造を外部に委託しました。外部委託先との契約内容の詰めが甘かったのでしょう、この時からずっと、外部委託先は、黒ビールを使わない商品を納入してきて、キリンビールもそれに気がついていなかったようです。
外部委託先との契約、というか商品の仕様設定上、黒ビールを使わなければならない、というたてつけになっていなかったのではないかと推測します。もしそうならばキリンシティ側の過失と言わねばなりません。
とはいえ、これら「黒ビールカリー」シリーズに実は黒ビールが使われていない、という事実を知って以来のキリンシティ側の動きはなかなか立派です。即日、黒ビールカリーシリーズの販売を中止し、原因究明に乗り出し、翌日には消費者庁に自主報告。その後の調査にも協力してきたようです。
商品製造の外部委託や、あるいは外部委託先の変更をきっかけに、当初予定していた商品の仕様が守られなくなってしまい、結果として、その商品の広告が実態と乖離し、虚偽表示になってしまう、という事態は、割と頻繁に発生します。まずとるべき対策は、商品の販売停止と、原因究明調査の手配、消費者庁への報告。この三つです。ご相談にいらっしゃったお客様への弁護士としてのアドバイスも、この三つ、ということになります。
しかし、たいていのお客様は躊躇します。この三つはどれも企業活動に大きな影響を与えます。売れ筋商品であればあるほど影響は深刻です。躊躇するのも、もっともです。
ですが、「知っていながら販売を続けた」「知っていながら報告しなかった」となると消費者庁からも厳しい眼で見られますし、社会からの批判も厳しくなります。やはり、販売停止、調査開始、そして自主報告。いかに早くこの三つの対策を採れるかに、企業の回復はかかってきます。
そして何にせよこのような事態に陥らないことが一番大事です。大事な貴社の商品を外部委託するとき、あるいは外部委託先を変更するときには、広告表現と実体が乖離することのないよう、契約書の建付け等に、十分ご留意ください。
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