医療機器の該当性について

投稿日:2021年4月14日

カテゴリ:事務所ブログ

医療機器とは,「人若しくは動物の疾病の診断, 治療若しくは予防に使用されること, 又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療製品を除く。)であって, 政令で定めるもの」をいいます(医薬品及び医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」 といいます。) 2条4号)。

つまり,

① 人や動物の疾病治療等に使用されるか,又は身体への影響を及ぼすものであること

② 再生医療製品を除く機械器具類であること

③政令 (薬機法施行令別表第一 )に定められていること

の3つの要件に該当するものが原則として医療機器にあたります。

 

 

ただ,実務上の医療機器該当性は,対象となる製品を上記の要件に形式的に当てはめようとしてもその判断が困難な場合も多く存在します。

特に,要件①については, 何が「疾病の診断, 治療, 予防」行為であり, 何が「身体の構造, 機能に影響を及ぼす」といえるのか,という点につき,規定そのものが極めて抽象的・一般的な表現にとどまっているため,一義的な判断が困難な場合も多いです。したがって,結局のところ,条文の表現のみからでは,どのような製品が医療機器に該当するのかがおよそ不明であるということは往々にして生じ得ます。

しかし,要件①の該当性判断の一つの目安として,当該製品がその商品説明等においてどのような使用目的を標榜しているのか, という点を考えることは極めて重要です。例えば,人の体温を測る機械器具があったとして,それが体温計のように病院等の医療機関等で人の疾病の治療や予防等に使用される目的が大々的に標榜されていれば, 医療機器に該当する可能性が極めて高くなるといえます。これに対して, 同じ人の体温を測る機械器具であっても,施設の出入口等でよく見かける来場者の体表温度を遠隔から測定し, あくまで施設来場者の体温に関するデータ収集の目的しか標榜していないのであれば, 医療機器に該当する可能性は低くなるといえます。

このように,当該製品がいかなる使用目的を標榜しているのかにより, 同じ製品であっても医療機器に該当したり該当しなかったりするということがあり得るわけです。このような意味で医療機器該当性判断は,ある意味で製造者や製造販売業者の意図によって左右され得るものということができそうです。
もちろん,医療機器該当性は当該製品の使用目的の標榜だけで確定的•最終的に決まるものではありません。しかし,薬機法2条4号の表現のみからでは医療機器該当性判断が困難な場合には, 当該製品の主たる使用目的は何でどのような表現でそれを説明しようとしているのか, という点をまず考えてみるとよいといえます。